不動産の引き継ぎ、生前贈与と相続の違いは?
親や親族から不動産を引き継ぐには、「生前贈与」か「相続」が一般的です。
どちらの場合も、不動産自体の評価方法は同じですが、引き継ぎ時にかかる税金の種類や、利用できる控除制度が異なります。
どちらの方法が適しているかは、不動産の状況によって異なるのですが、不動産を引き継ぐ前に、まずはこの2つの違いについて理解することが大切です。
そこで今回は、不動産の生前贈与と相続の違い、それぞれのメリットについて解説したいと思います。
生前贈与と相続の基本的な違い
財産の「生前贈与」と「相続」には、基本的に次のような違いがあります。
1. 不動産を引き継ぐタイミング
生前贈与と相続の、最大の違いは「財産を引き継ぐタイミング」です。
生前贈与は、財産を贈る人(贈与者)が生きているうちに財産を引き継ぎます。
一方、相続では、財産を保有している人(被相続人)が亡くなってから財産を引き継ぎます。
2. 支払う税金の税率や、種類
不動産の所有者が変わる際には、「登録免許税」と「不動産取得税」という税金がかかります。
これは、生前贈与であっても相続であっても同じですが、それぞれ税率が異なります。
【税金の種類】 | 相続 | 贈与 |
登録免許税 | 0.4% | 2% |
不動産取得税 | なし | 1.5%〜4% |
これらの税金を合わせると、生前贈与の場合は最大6%、相続の場合は最大0.4%となります。
こう見ると、相続の方が圧倒的に税金が安いように思いますが、土地を相続した場合には、この2つの税金とは別に「相続税」が発生するので注意が必要です。
3.基礎控除や特例制度の有無
先ほど、相続には「相続税」がかかると説明しましたが、すべてのケースで相続税が発生するわけではありません。
相続には、「相続税の基礎控除」と「小規模宅地等の特例」があるからです。
相続税の基礎控除額は、以下のように計算します。
・基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
そのため、最低でも3,600万円(法定相続人が1人のケース)は、税金が控除されるということです。
また、相続時にはこの基礎控除以外に「小規模宅地等の特例」が適用されます。
これは、自宅や事業用の相続税評価額が最大80%減額される制度です。
土地の330㎡までの部分は80%減額、それ以上には本則税率が課せられます。
これらの基礎控除・特例制度は、相続の場合のみに使えるもので、生前贈与では適用されません。
出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
相続のメリット
不動産を相続するメリットは、なんと言っても節税効果の高さです。
基礎控除以内であれば相続税はかからない
相続税は、すべての資産(不動産・預貯金・証券など)の総額から、基礎控除を差し引いた金額に課せられる税です。
基礎控除以内に資産の総額がおさまれば、相続税は課せられません。
例えば、被相続人に配偶者と子ども3人がいた場合、法定相続人は4人となり、
基礎控除額は「3,000万円+(600万円×4人)=5,400万円」になります。
さらに、「小規模宅地等の特例」で、不動産の評価額は最大80%減額になりますから、
生前贈与で譲渡するよりも節税できるケースが圧倒的に多いのです。
生前贈与のメリット
では、生前贈与にメリットがまったくないのかというと、そんなことはありません。
不動産を確実に引き継ぐことができる
生前贈与は、贈与者(財産を贈る人)と受贈者(財産を受け取る人)、双方の合意によって成立します。
そのため、特定の人物に確実に贈与することができます。
一方、相続だと、基本的には法定相続人に定められた相続割合に合わせて、財産が振り分けられることになります。
不動産もその対象で、1つの不動産を複数名で分割して相続する、というケースも非常に多くあります。
単独名義で相続したい場合は、相続人同士での話し合いが必要になります。
そのため、「確実に不動産が引き継ぐことができる」というのは、生前贈与の大きなメリットとなるのです。
不動産収入を引き継げる
贈与を受ける不動産が賃貸物件であった場合、生前贈与で早めに引き継いでおけば、その不動産から得られる収益で収入が得られるようになります。
また、収益を出している不動産を先に引き渡しておくことで、贈与者はこの不動産から得る現金資産を増やさなくてすむようになります。
現金財産を減らしておくことで、相続時の相続税を節約するのにも役立つというわけです。
まとめ
不動産をどのように引き継ぐのがいいかは、それぞれのケースによって異なります。
資産総額が基礎控除以内という人や、「小規模宅地等の特例」を利用して、相続税の負担を下げたいという人は、相続が向いています。
収益を生み出している不動産を受け継ぐ場合、もしくは、法定相続人が複数いるけれども、特定の人物に確実に引き継ぎたいのであれば、生前贈与を選んだ方がいいでしょう。
また、稀ではありますが、その土地の資産価値がいずれ高騰する可能性がある場合、評価額が低いうちに生前贈与で受け渡すというケースもあります。
このように、不動産をどのように扱うかは、その財産の性質や将来の見通し、税制の適用など、さまざまな要因を考えた上で、決めていくことが大切です。
不動産の相続や生前贈与に関するご相談がある方は、専門家集団である荒井会計事務所までご相談ください。
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