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2025年8月29日 不動産コラム 不動産市川市浦安市相続空き家

不要な土地を国に返す「相続土地国庫帰属制度」とは

相続した土地を活用したり管理することが難しく、さらに売却もできないとなった場合、最終的な選択肢のひとつとして「相続土地国庫帰属制度」があります。

その名の通り、相続した土地を国に返すという制度なのですが、利用するには審査を通過することや手数料を支払うことなど、さまざまな要件があります。

今回は、土地処分の最終手段「相続土地国家帰属制度」について解説していきます。

相続土地国庫帰属制度の概要

少子高齢化と人口減少が進み、日本各地で空き家や使われない土地が増え続けています。
しかし、相続によって取得した不動産の管理負担や税負担を理由に「引き継ぎたくない」と考える相続人も増えていて、活用されない不動産の増加が社会問題になっています。
そしてこの傾向は、人口減少に歯止めがかからない以上、この先もますます加速していくでしょう。

これに対処するため、2023年4月にスタートしたのが「相続土地国庫帰属制度」です。

この制度は、一定の条件を満たす土地であれば、相続や遺贈によって取得した土地を国に引き渡し、所有権を放棄できるという仕組みです。

従来は所有権放棄が極めて困難で、手放したくても固定資産税の負担や管理責任が続くという課題がありましたが、この制度により、不要な土地の処分が可能となりました。

ただし、制度を利用するには「審査手数料」と「負担金」の支払いが必要で、かつ土地が国の管理に適していることが条件です。
宅地や農地、山林など形状や利用状況によって審査基準が異なるため、事前の条件確認が重要となります。

制度が必要とされる背景と空き家問題

総務省の調査によると、全国の空き家は2023年時点で約900万戸に達し、その半数近くが相続によって発生したものと推定されています。
所有者が高齢化し、相続人も遠方に住むケースが増え、管理が行き届かないまま放置される空き家や土地が増加してきました。

引用:総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果

このような所有者不明土地や老朽化空き家は、防災・衛生・景観の観点からも社会問題となっており、行政による是正措置や税制強化が進んでいます。
固定資産税の優遇が外れる「特定空家」指定や、管理不全空き家への新たな規定もその一環です。

国は、こうした「使われない土地」を円滑に処分できる道を開くことで、管理不全や所有者不明化を防ぐ狙いがあります。
そのため、相続土地国庫帰属制度は単なる所有権放棄の手段ではなく、社会全体の土地利用の健全化に直結する政策と位置づけられています。

制度利用の条件と費用

制度を利用できるのは「相続または遺贈で取得した土地」に限られます。生前贈与や売買で取得した土地は対象外です。また、建物が残っている場合は原則として解体が必要で、更地であることが条件となります。

さらに、以下のような土地は引き取り対象外となります。

  • 建物がある土地
  • 担保権が設定されている土地
  • 使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
  • 通路その他の他人による使用が予定される土地として、1〜4が含まれる土地
    1. 現に通路の用に供されている土地
    2. 墓地内の土地
    3. 境内地
    4. 現に水道用地・用悪水路・ため池の用に供されている土地
  • 特定有害物質により汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地
  • 勾配の急な崖地

※詳細な要件はこちらで確認できます

費用面では、申請時に審査手数料(1筆14,000円)と、国が今後管理するための負担金が必要です。この負担金は、宅地200㎡であれば約80万円、粗放的な管理で足りる原野だと約20万円が目安ですが、地目や面積により変動します。
負担金の納付期限は、通知が到達した日の翌日から30日以内。期限内に納付しないと、国庫帰属の承認が失効します。

なお、申請から承認まで数か月を要し、承認後は所有権移転登記が行われることで、はじめて土地の管理責任や固定資産税負担から解放されます。

相続土地国庫帰属制度利用のメリットとデメリット

最大のメリットは、不要な土地の管理責任と税負担から解放されることです。
遠方に住む相続人や、利用予定のない土地を引き継ぐことになった場合、精神的・経済的な負担を大幅に減らすことができます。
宅地だけでなく、農地や森林も引き取りの対象になるので、売却先を探すのが非常に困難な用途の不動産でも相続土地国庫帰属制度を利用すれば手放すことができます。

一方で、利用できる土地が限られている点、費用負担が比較的高額である点はデメリットと言えるでしょう。
一筆14,000円の審査手数料+負担金(数十万)が必要ですし、建物解体や境界確定測量などの前提作業が必要な場合、制度利用前に追加コストも発生します。

そのため、この制度は「売却できず、活用も困難で、管理負担だけが残る土地」に対して有効な手段といえます。利用可否の判断には、不動産の現状評価と費用試算を行い、専門家の意見を取り入れることが望ましいでしょう。

まとめ

相続土地国庫帰属制度は、空き家や、利用予定のない土地の管理負担を解消するための有効な制度です。
しかし、全ての土地に適用できるわけではなく、条件を満たすための事前準備や高額な費用負担が必要になります。

空き家問題が深刻化する中、国もこの制度の活用を促していますが、条件を通過できる不動産は限定的だという見方もあります。
そのため現状では、売却や活用など他の選択肢も比較検討しながら、一つの選択肢として考えておく方が妥当でしょう。

今後、国の方針によって制度が変わっていくことも考えられるので、これから相続する予定があるという人などは予め知識をつけて、動向をチェックしておくことがおすすめです。

相続した不動産の対応にお困りの方、相続土地国庫帰属制度の利用を検討されている方は、専門家集団である荒井会計事務所まで、ぜひ一度ご相談ください。

この記事を書いた人

我々は不動産・相続に強い専門家集団です。この「行徳・妙典・浦安」地域で税理士開業して25年になります。
毎年この地域の方より700件以上の確定申告の依頼を受けており、不動産の確定申告や節税に関する対応を得意としています。
節税を考えている方、不動産の法人化を検討している方、不動産の売却を考えている方、相続対策を考えている方、不動産でお悩みの方、ぜひお気軽にご相談ください。
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