2023年(令和5年度)の確定申告、手続き方法と変更点について
年が明け、ようやく普段の生活にも慣れてきたころかと思いますが、あっという間に確定申告の時期が来月に迫ってきました。
今回は、2023年度(令和5年度)の確定申告に備えるための、確定申告の基本的な知識について紹介します。
確定申告の基本
確定申告は、所得税法に基づいて「前年1年間の所得」に対する税金を計算し、国に申告する手続きです。所得には、給与所得、事業所得、株式や投資からの所得、そして不動産所得などが含まれます。
「所得」とは、収入金額から経費を差し引いた金額です。大家業をしている人であれば、賃料収入から管理費や修繕費を差し引いて残った金額が所得として扱われることになります。
そのため、確定申告をする際には、1年間で得た収入と、それを得るのにかかった必要経費を洗い出しておく必要があります。
2023年度(令和5年度)確定申告の期限と手続き
確定申告の期限
2023年提出分の確定申告期間は、2024年2月16日(金)から3月15日(金)までです。
この期限を過ぎても申告はできますが、無申告加算税や延滞税が発生する可能性があるので、必ず間に合わせるようにしましょう。
手続きの流れ
1.書類の準備
年間の収入や経費に関する書類、領収書、取引明細などを準備します。
2.申告書の作成
国税庁のe-Taxソフトウェアや、税務署で提供される書類を使用して申告書を作成します。
3.申告と納税
申告書を税務署に提出し、必要に応じて税金を納付します。所得が少ない場合は、払い過ぎた税金が還付されます。
確定申告が必要な人は?
確定申告が必要なのは、主に以下のような人です。
・事業所得がある人(自営業者、個人事業主など)
・年間20万円以上の副収入があるサラリーマンや公務員など
・資産所得がある人(株式や不動産からの収入)
・控除を受けたい人(医療費控除や寄付金控除、住宅ローン控除など)
また、不動産に関連するものだと、以下のような人も対象です。
・不動産を売却した人(売却で得た”譲渡所得”を申告)
・家賃収入がある人(”不動産所得”を申告)
・住宅ローンを利用してマイホームを購入した人(住宅ローン控除の適用)
・住宅ローンを利用して特定のリフォームを行った人(住宅ローン控除の適用)
住宅ローン控除については、初年度だけが確定申告の対象です。
確定申告の具体的なやり方
それでは、実際にどのようにして確定申告を進めたら良いのか説明していきましょう。
1.収入の計算
すべての収入源からの収入を正確に計算します。収入には以下のようなものがありますので、漏れが無いように確認しましょう。
・給与:会社勤めをしている人に企業から支払われる収入。給料、賞与、手当など
・事業収入:自営業者などが事業活動から得る収入
・不動産収入:家賃、管理費、共益費、礼金、駐車場使用料などの収入
・利子収入:預貯金の利息や、国債、社債などの利子で得た収入
・配当:株式や投資信託からの配当
・退職金
・山林所得:林業による収入
・不動産の売却で得た収入
・一時的な収入:なんらかの賞金や懸賞などで得た収入
・雑所得:上記どのカテゴリにも該当しない収入。講演料や執筆料、個人的な貸付金の利息など
2.経費の控除
事業所得や不動産所得に関する必要経費を洗い出し、収入から差し引きます。この作業が「所得を確定させる」作業になります。賃料収入のある場合は、以下のような項目を経費として扱うことができます。
・家賃の集金代行手数料
・建物管理費
・修繕積立金(共用部分)
・修繕費(専有部分)
・税金(固定資産税、不動産取得税、登録免許税)
・住宅ローンの支払金利(土地等の取得に要した金利分は経費になりません)
・減価償却費
・火災保険料
・登記費用(司法書士報酬含む)
・ローン事務手数料(融資活用の場合)
・税理士報酬
所得を抑えるための大切な作業なので、過去に支払った分の領収書などは普段からきちんと整理しておきましょう。
3.所得控除の適用
住宅ローン控除や生命保険料控除、社会保険料控除など、所得控除の適用を確認します。ふるさと納税などもこのタイミングで納税金額を入力しておきます。
4.提出
書類が準備できたら、管轄の税務署に提出します。提出方法は、税務署に直接持参するか、郵送、e-Tax(電子申告)の3つです。
郵送する場合は、期日内に到着するかどうかしっかり確認を。e-taxの場合は、WEBサイトでの事前登録やマイナンバーカードの用意が必要になります。
妙典、行徳、浦安市の税務署はどこにある?
妙典、行徳、浦安市にお住まいの方は「市川税務署」が管轄になります。なお、3月に入ると税務署は混雑するので、相談や、持参での申告を考えている人は早めに動きましょう。
なお、2023年(令和5年)7月10日から、各種申告書類を郵送する場合は、千葉市花見川区の「東京国税局業務センター千葉西分室」に送付することになっています。市川税務署の住所ではないので注意しましょう。
【市川税務署】 ※各種相談や、持参した申告書の受付
千葉県市川市北方1丁目11-10
(京成線鬼越駅徒歩2分、JR総武線本八幡駅徒歩15分、都営新宿線本八幡駅徒歩15分)
開庁時間:月曜〜金曜 8時30分〜17時(土日祝日、12月29日〜1月3日は休み)
【東京国税局業務センター千葉西分室】 ※申告書を郵送する場合の宛先
〒262-8507 千葉市花見川区武石町1-520
2023年(令和5年)度の確定申告書類の変更点
2023年(令和5年)度の確定申告では、9つの変更点があります。大きな変更ではありませんが、一部の人には該当しますので、確認しておきましょう。
- 確定申告書 第二表:「親族欄」
- 確定申告書 第二表:特定株式の収入に関する「申告不要制度」の削除
- 青色申告決算書、収支内訳書:インボイス制度に対応した用紙に変更
- 納税地の異動又は変更がある場合の手続きが原則不要に
- 申告書等用紙の送付が取りやめ、納付書の送付も見直し
- 確定申告書等作成コーナー|マイナポータル連携の拡大
- インボイス発行事業者の消費税の申告書に対応
- 申告書第四表|特定非常災害の被災者の方用の付表
- (高所得者向け)財産債務調書制度と国外財産調書制度の改正
1. 確定申告書 第二表:「親族欄」
配偶者や家族が、障害者や国外居住などに該当する場合は、「配偶者や親族に関する事項」欄 の右の、該当する欄に〇を記入するようになりました。
2. 確定申告書 第二表:特定株式の収入に関する「申告不要制度」の削除
これまでは、特定株式の収入に関する「申告不要制度」の記入欄がありましたが、令和4年度の税制改正の影響により、令和5年分の所得税の確定申告から削除となりました。
3.青色申告決算書、収支内訳書:インボイス制度に対応した用紙に変更
青色申告者用の用紙に「売上(収入)金額の明細」「仕入金額の明細」、そして登録番号(法人番号)を記載する欄が追加されました。これらはインボイス制度に対応するためのものになります。
また、白色申告者の「収支内訳書」にも、任意で登録番号や法人番号を記載するための欄が新たに設けられています。
4.納税地の異動又は変更がある場合の手続きが原則不要に
これまでは、引越しなどで納税地を移動した場合は手続きが必要でしたが、2024年1月1日からはこれらの手続きが原則不要となりました。国税当局は、提出された確定申告書の情報から納税地を把握できるようになったからです。
5.申告書等用紙の送付が取りやめ、納付書の送付も見直し
行政コスト削減のため、一部の納付者には、去年まで自動的に送付されてきていた確定申告書の納付書が、郵送されて来なくなります。
今までにe-taxで確定申告をしていた法人、e-taxでの申告が義務化されている法人、クレジットカードなやコンビニ納付、e-taxからの直接口座振替による納付をした人が対象です。
これらの方法で納付をしたことがある人は、今年から納付書は送られて来ないので気をつけましょう。
6.申告書第四表:特定非常災害の被災者の方用の付表
2023年4月1日以降に発生した「特定非常災害」の被災者の方で、損失申告を損失申告をする場合は、申告書第四表(損失申告用)付表を使用して申告するようになります。
法改正により、災害に関連する損失の繰越控除期間が3年から5年に延長されました。
7.(高所得者向け)財産債務調書制度と国外財産調書制度の改正
・年間所得金額の合計が2,000万円を超える人(年間の退職所得を除く)
・その年の12月31日時点で合計価額が3億円以上の財産、または合計価額が1億円以上の有価証券等を所有する人
以上の条件を満たす人は、無条件に確定申告をする必要がありましたが、2023年(令和5年)度からは、これに加えて「12月31日時点で合計価額が10億円以上の財産を所有する居住者」にも提出義務が発生しました。
まとめ
確定申告は非常に手間がかかるものですが、納税のために非常に重要な手続きですし、きちんと計算することで税金の節約を図ることも可能です。
不動産を運用している人であれば、不動産収入を得るための経費を漏らさず計上することが大切ですし、それ以外の方も、各種控除制度を最大限に活用することで、税金を抑えることができます。
複雑な税務状況にある場合や、確定申告に不安を感じる場合は、ぜひ一度、専門家集団である荒井会計事務所までご相談ください。