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2025年9月12日 不動産コラム 不動産果樹園森林相続農地

農地を相続したら、手続きや相続税の支払いはどうなる?

畑や田んぼ、山林といった「農地」を相続した場合、宅地を相続したときとは手続きが若干異なります。

普段は都市部に暮らしているなどで農地とは縁がない人だと、いざ相続したときに困ってしまうことがあるので、今回は「農地の相続」について概要を解説していきましょう。

そもそも「農地」とは?

わたしたちが家を建てて暮らしている土地というのは、法律上「宅地」という地目で扱われています。

一方、「農地」というのはその名の通り、農業のために使われている土地のことです。
農地法第2条第1項によると、農地は厳密には「耕作の目的に供される土地」とあらわされています。

田んぼや畑、果樹園など、いま現在作物を育てている土地はもちろんですが、現在は何も育てていないが耕作目的で利用できる土地は「農地」として扱われます。

なお、家畜の飼料用の牧草を育てる土地は、「採草牧草地」に分類されており、農地には該当しません。
また、かつては農地だったけれども放置されすぎていて、耕作地として回復する見込みがない土地も、農地の対象外となります。

相続した土地が農地にあたるかどうか不安な人は、各市町村に設置されている農業委員会に問い合わせ、確認を受けることが安全です。

農地を相続した時に必要な2つの手続き

①法務局での相続登記

当然ですが「農地」も土地の一種です。
2024年4月以降、土地を相続した場合は登記義務(不動産所有者の名義を変更する義務)ができたので、農地を相続した場合もまずは登記を行いましょう。

その土地を管轄している法務局に行って、一般的な不動産(宅地など)と同じように登記を行います。
登記の期限は、その相続を知った日から3年以内です。

②農業委員会へ相続の届出

農地の相続によって特別に発生する手続きが、「農業委員会への相続届出」です。管轄の農業委員会に、定められた様式の「届出書」と「登記事項証明書」を提出します。

届出の期限は、相続開始を知ってから10か月以内。期限を過ぎても届出がされていない場合は、10万円以下の過料を求められることがあります。

なお、法定相続人以外が農地を引き継ぐ場合には、農業委員会に申請し、許可を受ける必要があるので注意しましょう。

通常の相続(法定相続人が相続した場合)については、許可は必要なく届出だけで手続きは完了します。

農業を行う予定がない人が、農地を引き継いだら…

農地というのは、耕作しないで放置していると土地が荒れ、周辺にも悪影響を及ぼしますので、なるべく人の管理が行き届いている方がよいとされています。

しかしながら、普段は都心暮らしの人がたまたま相続した、というケースもままあり、管理することができないと仰る人も少なくありません。「農地を引き継いだけれども、自分自身は農業を行う予定がない」という場合は、次のような方法が考えられます。

貸出

ほかの農家に貸し出す方法です。基本的には賃貸契約を結ぶことで農地を貸し出すことができますが、市町村の農業委員会に申請書を提出する必要もあります。

転用

相続した農地をほかの目的に活用できる土地に変更する方法です。駐車場やアパート経営にシフトするケースもよくあります。農地の用途を変更する場合にも、農業委員会に許可申請が必要です。

農地の面積が30アールを超える場合には、農業委員会と農林水産大臣の協議が必要なケースもあります。

売却

買い手を見つけて売却する方法です。売却にも2種類の方法があって、「農地として売却するのか」「地目を変えて売却するのか」に分かれます。

農地のまま売却する場合には、売却先は農家または農業生産法人に限られます。

一方、地目を変えて売却する(農地から宅地などに変更する)場合には、こちらもまずは農業委員会の許可が必要になります。仮に、許可が通らず却下となれば農地として売却する必要があります。

相続放棄

相続が始まってから3カ月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申し立てを行うことで、農地を含む財産の相続を放棄できます。ただし、「相続放棄」はすべての相続を放棄する事なので、慎重に判断しましょう。

相続税の納税猶予がある

農地を相続すると、建物や現金と同様に相続財産として相続税の対象になります。しかし、農業を継承する相続人の負担を軽減するために、農地相続に特化した制度が整備されています。


農業を営んでいた被相続人から農地を取得し、相続人が引き続き農業または特定貸付けを行う場合、その農地の「農業投資価格」を超える相続税額は、猶予される制度があります。

ここで言う「農業投資価格」は、実際の市場価格より低めに評価されており、農業を続けるための支援策として機能しています。

まず、相続税申告時にこの特例の適用を申告します。対象となる農地の評価額を、通常評価と「農業投資価格」で再計算し、その差額にかかる相続税額が納税猶予税額となります。

 その後、3年ごとに「納税猶予の継続届出書」や農業継続の証明書を税務署へ提出する必要があります。また、許可を得て農地交換や買換えを行えば、猶予措置を継続することも可能になります。

まとめ

相続によって農地を取得する人は、一般的な宅地と比べてそう多くはありませんが、少しでも可能性がある人は知っておいたほうが良いでしょう。

特に、農地を相続した相続人が継続して農業を営む場合、「相続税の納税猶予制度」を活用すれば、農業投資価格を超える税額の納税が猶予され、さらに条件を満たせば免除される可能性もあります。

継続的な農業経営や適切な手続きが要件となるため、制度を活用する際には税理士など専門家の支援を受けることがお勧めです。農地の相続でお困りの方は、専門家集団である税理士法人荒井会計事務所にぜひご相談ください。

この記事を書いた人

我々は不動産・相続に強い専門家集団です。この「行徳・妙典・浦安」地域で税理士開業して25年になります。
毎年この地域の方より700件以上の確定申告の依頼を受けており、不動産の確定申告や節税に関する対応を得意としています。
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