不動産の遺産分割協議では何を決めるべき?トラブル回避のポイントは?
不動産を相続する際、遺産分割協議は避けて通ることのできないステップです。
特に不動産は高額ですし、共有名義や負債の問題など細かい取り決めが必要で、揉め事に発展することも非常に多い資産です。
適切に協議を行いトラブルを回避するためにも、いくつかの重要なポイントを押さえておきましょう。
今回は、遺産分割協議で決めるべき事項と、トラブルを未然に防ぐためのポイントについて詳しく解説します。
相続する人を特定する
まず、遺産分割協議で最初に行うべきことは、「不動産を誰が相続するのか」を明確にすることです。
不動産の相続人は、遺言がある場合はその内容に基づき、遺言がない場合は民法の規定に基づいて決定します。
相続人全員が合意しない限り、相続手続きは進められません。
そのため、早い段階で相続人の特定を行い、全員の合意を得ることが重要になります。
また、トラブルの一つとなるのが「相続人の中に行方不明者・連絡がつかない人がいる」場合です。
返事がないから無視してもいいだろうと考える人もいますが、法律上そういうわけにはいきません。
まずは戸籍謄本などを使って行方不明者・音信不通者の住所を特定し、連絡を試みてください。どうしても居場所が分からないとなると「不在者財産管理人」を選出し、その人に代理となって協議に参加してもらいます。
該当不動産の詳細情報を把握する
不動産を分割相続するためには、その詳細情報を正確に把握することも大切です。
土地の場合は、所在地、地番、地目、地積など。
物件であれば、築年数、住宅性能、床面積、家屋番号などです。
これらの情報は、不動産登記簿や公図などの書類から確認することができます。
不動産の評価額の確認
不動産の評価額は、遺産分割において非常に重要な要素となります。
他の遺産があるのであれば、その分の資産価値も算出しておき、すべての遺産の資産価値を洗い出した上で遺産相続協議をすることが望ましいです。
不動産評価額の確認は、専門家である「不動産鑑定士」に依頼するのが一般的で、費用相場は1件あたり20万円〜50万円ほど。金額は不動産の規模によって異なります。
※参照:国税庁「No.4602 土地家屋の評価」
相続の割合を決定する
複数の相続人がいる場合、それぞれの相続割合を決める必要があります。不動産は価値が高くなることが多いので、他の遺産と合わせて公平な分割を行わなくてはいけません。
そして、不動産の大きな特徴の一つとして、物理的に分割することが難しいという点があります。その土地を複数の土地に分ける「文筆」には手続き費用がかかりますし、文筆された土地は資産価値が下がる可能性が高いというデメリットも多いことを知っておきましょう。
負債の処理をどうするかを決める
不動産に抵当権や担保権が設定されている場合、また、その不動産購入時の借金などがある場合は、その負債の処理も考えなくてはいけません。
例えば、抵当権が付いたままでは、将来的にその不動産を自由に売却したり、借り入れを行ったりすることができなくなります。
負債が残っている不動産を相続する場合、その処理方法を協議し、負債を処理してから相続を開始するのか、それとも負債が残った状態でも良いので相続するのかを全員で話し合って決める必要があります。抵当権や借金を処理しないまま不動産を相続した場合、相続した人に返済する義務が移ります。
売却か賃貸をするなら、方針を決める
不動産を相続した後に売却や賃貸する場合、その方針をあらかじめ決めておきましょう。売却した場合や、手数料を引いた利益分をどのように分配するのか。賃貸であれば賃料の分配はどうするのか、そして修繕が発生した場合にはどうするかを決めておきます。
賃貸の場合は、その実務上、所有者(大家である人)はなるべく一人である方がいいとされています。
共有名義にする場合の管理方法を決める
不動産を複数人で所有する「共有名義」にする場合、その管理方法についても決めておきましょう。
共有名義の場合、一人で勝手に売却契約・賃貸契約を結ぶことはできず、全員の合意が必要です。
そのため、全体の連絡体制や、具体的な管理責任を誰が負うのかをあらかじめ決めておいた方がいいでしょう。
遺産分割協議書の作成と、実印の押印
話し合いにおいて決まった項目をすべて明文化し、「遺産分割協議書」としてまとめます。
協議書には、相続人全員が実印を押印が必要で、この押印を持って法的効力が発生します。
トラブル回避のためのポイント
遺産分割協議というのは、感情的な対立や利害関係が絡むことでトラブルが発生しやすいものです。これは不動産に限ったことではありません。協議を円滑に進めるためにも、次のポイントに注意しておきましょう。
全員の意見を尊重する
一方的に話を進めたり、なかなか話し合いに参加しない人がいたとしても、その人を置いて物事を決めるのはタブーです。相続人全員の意見を聞きながら、お互いが納得できるように配慮しましょう。
専門家の助言を求める・専門家を間に挟んで話し合いを持つ
弁護士や税理士、不動産鑑定士などの専門家の意見を取り入れることで、正しい判断がしやすくなります。
また、話し合いの場に、専門家に立ち会ってもらうこともいいでしょう。
第三者が居ることで、家族間での話し合いよりも冷静に話を進められますし、不明点があったらその場で意見を求めることもできます。
まとめ
不動産の遺産分割協議は、相続人全員が納得できる形で進めることが非常に重要です。
事前に協議事項を明確にし、トラブルになりそうなポイントを知っておいた上で話し合いに臨むと、スムーズに運びやすくなるでしょう。
専門家の力も借りながら、冷静に協議を進めることが大切です。
遺産分割協議でお困りの方は、専門家集団である税理士法人荒井会計事務所にぜひご相談ください。