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2024年6月18日 不動産コラム 2024法改正7年不動産延長生前贈与相続適用期限

生前贈与の適用期限が3年から7年に! 2024年法改正の内容について解説

2023年度(2024年から施行)の税制改正で、生前贈与に関する税制が改正されました。
主な改正ポイントは、①生前贈与の適用期限の延長(3年から7年へ)、②相続時精算課税に基礎控除枠を設定、③相続時精算課税の資産評価方法の改正です。

今回は、この3点の改正について、解説していきます。

生前贈与とは?

「相続」とは、ある人が死亡したときにその人の財産(すべての権利や義務)を、特定の人が引き継ぐことをいいます。
一方、「生前贈与」とは、ある人が生きている間にその人の財産を、特定の人に引き継ぐことです。

相続の場合には相続税が発生し、生前贈与の場合は贈与税が発生しますが、税率や控除額が異なります。
どちらの方がお得になるかは、ケースによって異なりますが、資産が多ければ多いほど、生前贈与の方が得をすることが多いです。

また、相続では、法定相続人(配偶者・子ども・孫・親など)もしくは遺言書で指定した相続人が財産を引き継ぎますが、生前贈与は、贈与する相手とタイミングを自由に選ぶことができるという違いがあります。

生前贈与の現行制度

生前贈与をする場合には贈与税が発生しますが、「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つから選ぶことができます。
相続時精算課税を利用する場合は申請が必要となり、申請がない場合は自動的に暦年課税とみなされます。

生前贈与の暦年課税

暦年課税を選択すると、毎年110万円までの生前贈与については、贈与税が非課税になります。
110万円は少ない、と感じる方もいらっしゃいますが、10年間、毎年110万円ずつ贈与していれば、1,100万円を非課税で贈与することができます。

この控除制度を利用し長期的に贈与していくことで、相続時の財産総額を減少させて、相続税を節約することができるのです。

なお、110万円を超えた分の贈与に関しては、贈与税が発生します。

ただし、このような財産についても相続税の課税対象とすべきという考えから、亡くなる前の一定期間の贈与は相続財産に加算するというルールがあります。
「生前贈与加算」と呼ばれるものですが、2023年12月31日までは、亡くなる3年前までの期間が対象でした。

生前贈与の相続時精算課税

相続時精算課税制度を選択した場合、2,500万円までは贈与税を納めずに贈与を受けることができます。
そして、贈与者が亡くなった時には、その贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額から相続税額を計算し、一括して相続税として納税します。

相続時精算課税では、原則としては、被相続者が60歳以上の父母または祖父母であること、相続者が8歳以上の子または孫などであることが条件です。
※参照:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択

では、次に2024年の具体的な改正内容について見ていきましょう。

2024年の改正(1) 生前贈与の適用期限が3年→7年に

亡くなる前の一定期間の贈与についても、相続として扱うべきだというこの「生前贈与加算」ですが、2024年の税制改正により、3年間から7年間に延長されました。

ただし、急に3年から7年に延長されるわけではなく、段階的に進められ、その移行期間のうちは、相続税・生前贈与税の計算が複雑になります。

例えば、延長となった4年間の贈与のうち、100万円までは相続財産に加算されないというもの。

たとえば、毎年50万円の生前贈与を続けていた場合、3年以内の150万円はそのまま生前贈与加算の対象となりますが、4年前〜7年以内の合計200万円は、100万円を控除した100万円が生前贈与加算の対象となります。

また、生前贈与加算の対象となるのは、2024年1月以降の贈与分からなのですが、実際に影響があるのは2027年1月1日以降に発生する相続での生前贈与です。

例えば、

・2023年1月1日に生前贈与した人が、2026年6月1日に亡くなった場合、加算期間は2023年6月1日までの3年間

・2024年1月1日に生前贈与した人が、2027年2月1日に亡くなった場合、加算期間は2024年1月1日〜2027年2月1日(3年1ヶ月)

となります。

2024年の改正(2) 相続時精算課税に基礎控除110万円が新設

同時に、2024年1月1日贈与分から、相続時精算課税での「基礎控除110万円」が新設されました。
これは、累積贈与額が2,500万円を超えない範囲であれば、年間110万円までは贈与税がかからないというものです。

また、贈与者が亡くなり相続が発生した場合、相続税の課税対象となる資産は、贈与額年間110万円までを控除した残額となります。

2024年の改正(3) 相続時精算課税の資産評価方法の改正

これまで、相続時精算課税を選択し、土地や建物といった不動産を引き継いだ場合、その評価額は贈与時の時価で評価することとされていました。

これが、2024年の改正によって、土地または建物が災害により一定の被害を受けた場合には、相続発生時に評価額を再計算することが可能となりました。

まとめ

今回の改正では、暦年課税の生前贈与加算の期間が3年から7年になり、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が新設された、という点が大きなポイントです。

特に、生前贈与加算の期間が段階的に延長となることで、すでに長期的な贈与計画を立てていた人は、計算方法が変わってくるために、計画の見直しが必要になってくるでしょう。中には、あえて贈与をせずに相続を選ぶといったケースも出てきます。

相続・生前贈与については、適切なタイミングで行うことが肝要になります。
現在の計画に不安がある人、また、これから贈与や相続を考えているという人は、一度、専門家集団である荒井会計事務所までご相談ください。
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この記事を書いた人

我々は不動産・相続に強い専門家集団です。この「行徳・妙典・浦安」地域で税理士開業して25年になります。
毎年この地域の方より700件以上の確定申告の依頼を受けており、不動産の確定申告や節税に関する対応を得意としています。
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