いまニュースで取り上げられている税制改正案がタワマン節税に与える影響とは??

先日、ニュースでこのような話題を目にしました。
いわゆる「タワマン節税」にメスが入るというものです。
そもそもタワマン節税がどういうものか、今後どのような変更が起こると想定されるのか、詳しく見ていきましょう。
なぜ不動産を買うと「節税」になったのか?
そもそも、なぜ現金で持っているよりも、タワーマンションなどの不動産に替えておいたほうが相続税を抑えられたのでしょうか。
その理由は、日本の相続税制度における「評価方法」の仕組みにあります 。
「実勢価格」と「評価額」のギャップ
相続税を計算する際、財産の価値を判定する必要がありますが、不動産は以下の基準で評価されます。
土地:道路ごとに設定された「路線価」をもとに算出 。
建物:自治体が決める「固定資産税評価額」をもとに算出 。
ここでのポイントのひとつが、これらの評価額は、実際に市場で売買される価格(実勢価格)よりも低く設定される傾向があるという点です。一般的に、路線価は実勢価格の8割程度が目安とされています 。
特にタワーマンションの場合は、高層階ほど人気が高く実勢価格が高くなりがちですが、評価額は低層階とほぼ変わらない、ということも指摘されてきました。
また、他人に貸している「賃貸用不動産」であれば、借地権や借家権の分として評価がさらに3割程度差し引かれる(貸家特例など)ため、相続時の評価額を実勢価格の半分以下に圧縮できるケースも少なくありませんでした 。
ので、相続が発生する際に、現金で渡すよりもタワマンなど不動産を購入して相続、としたほうが、相続税においては節税となりえたわけです。
この「実勢価格」と「評価額」の差を利用した節税方法というものがこれまで多く利用されてきました。
改正案の衝撃的な内容
しかし、こうした「行き過ぎた節税」に対し、国はついに本格的な規制に乗り出しました。
現在、与党税制調査会を中心に検討されている主な内容は、大きく分けて3つあります。
① 「5年以内」の購入物件は購入価格で評価
最も大きな変更点は、相続や贈与の直前(5年以内)に購入された投資用不動産について、従来の路線価評価ではなく「購入時の価格(取得価額)」を基準に評価するという案です 。
これはつまり、前述したような相続の際の駆け込みの節税が通用しなくなることを意味します 。
② タワーマンション評価のさらなる見直し
タワーマンションは、高層階ほど実勢価格が高いにもかかわらず、固定資産税評価額は平米数が同じなら階数に関わらず一定だったため、非常に大きな節税効果がありました。
2024年の改正ですでに是正措置が導入されましたが、依然として価格上昇が続いているため、さらに実勢価格との乖離を埋めるための算式見直しが検討されています 。
③ 「不動産小口化商品」への規制
高額な不動産を小口に分けて投資しやすくした「不動産小口化商品」も、相続時には評価額が半分以下になることが多く、近年人気を集めていました。
これについては、購入時期に関わらず売買の実例をもとに評価するという、さらに踏み込んだ案が出ています 。
国がルールを変えようとする4つの理由
なぜ今、これほどまでに大きな見直しが行われようとしているのでしょうか。
背景には、社会的な「公平性」への強い危機感があります。
課税の公平性の確保:
現金や株式で資産を持つ人と、不動産に替えることができる富裕層との間で、あまりに税負担の差が大きいことは不公平であるという批判が高まっています 。
租税回避の抑制:
本来の用途(住む、貸す)ではなく、単なる「税金逃れ」のためだけに不動産が売買される状況は、健全な税制の趣旨を逸脱していると判断されています 。
不動産市場の歪みを防ぐ:
節税目的の需要が集中することで、都心部のマンション価格が実態とかけ離れて高騰するなど、市場の健全性が損なわれる懸念があるためです 。
貴重な財源の確保:
人口減少に伴う税収減が見込まれる中、相続税は重要な財源であり、制度の抜け穴を塞いで適正に課税する必要性が高まっています 。
誰が、どのような影響を受けるのか?
今回の改正案の内容が実現すれば、不動産市場や個人の相続対策に大きな波紋が広がることは間違いありません。
影響が大きくなると想定されるケース
都心の人気マンションを相続予定の人:
実勢価格と評価額の乖離が大きいため、評価額が跳ね上がり、大幅な増税になる可能性があります。
相続直前に駆け込みで購入した人:
「購入価格」での評価が適用されると、節税メリットがほぼ消滅します。
節税目的だけで不動産を保有している人:
節税効果が薄れる一方で、維持費や管理の手間、空室リスクだけが残る「三重苦」に陥る恐れがあります。
影響が比較的小さいと想定されるケース
地価が安定している地方の土地や古い戸建て:
もともと実勢価格と評価額の差が小さいため、大きな変化はないと予測されます。
自宅として長年住んでいる家:
投資目的ではなく実需の不動産については、急激な負担増となる可能性は低いと考えられます。
まとめ
あくまで今回の内容は来年度の税制改正に向けた議論のひとつとして提示されたものであり、実際にはここから十分な議論が行われ、国会審議を経て最終決定されるものです。
それでもおおまかな方向性としては、これまで行われてきたような「高額な不動産による相続税節税」に対する規制強化、ということで間違いありません。
どのように決まるのか、またいつから対象になるのか、など議論の行方を注視していきましょう。
不動産などご自身の資産と向き合い、相続について考え直す良いチャンスともとらえられるかもしれません。
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