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2025年2月12日 不動産コラム 2024年4月不動産手続き相続相続人申告登記相続登記義務化空き家遺産分割協議

「相続登記の義務化」から1年、今後の見通しは

2024年4月1日に「相続登記の義務化」が施行されてから1年が経ちました。
この制度の創設によって、所有者不明土地問題の解消が期待されていますが、実態は想定される効果は得られていないようです。

「相続」は誰の身にも起こりえるもの。
人によっては、準備不足のまま突然降りかかってくることもあります。
今一度、本制度についておさらいしながら、今後予定されている新たな法整備についても確認しておきましょう。

「相続登記の義務化」とは?

現在、日本には登記がされないまま相続が繰り返され、所有者が不明となっている土地が非常に多いと言われています。その面積を合わせると、なんと九州全土ほどの広さにもなりますが、この土地は処分することも活用されることもなく、放置されているのが現状です。

そこで創設されたのが「相続登記の義務化」制度です。
2024年の法改正により、相続した不動産について「所有権を取得した日から3年以内」に登記をすることが義務付けられました。
これによって、所有者不明の土地を減らし、国土を有効活用しようというのが国の狙いです。

不動産を相続したのに登記を怠った場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。

施行から一年、現状の課題も見えてきた

相続登記が進んでいない現実

制度導入から1年が経過しましたが、登記が遅れているケースが多いのが実態です。
前年度に比べて相続登記は14%増加していますが、所有者不明の土地面積はいまだに大きく減少していません。
法務省の見解では、この問題が解決するには数十年単位の時間がかかる見込みです。

相続登記が進まない理由として、該当する不動産が遠方にあり現地確認が困難であったり、家族間の遺産分割協議が長引いていることが考えられます。
特に、長年手付かずであった土地は、登記手続きをしようにもどこから手をつけていいか分からないといった理由で、義務化から1年間たっても、そのままにされていることが多いかと思われます。

手続きの複雑さと専門知識の不足が課題

相続登記の手続きは単純なものではなく、必要な書類(被相続人の戸籍謄本、住民票、遺産分割協議書など)を揃えるのに、非常に手間がかかります。
また、不動産ごとに異なる評価や条件があるため、登記の専門知識を持たない一般の相続人にとっては負担が大きいことが、この制度の課題ともされています。

不動産を相続したら、何をするべき?

さまざまな課題があるとはいえ、相続登記は相続人の義務となりました。
所有者不明の土地問題が社会問題となっている以上、この制度は数十年にわたって続くことになるでしょう。
そのため、もしあなたが不動産を相続することになったら、必ず登記をしなくてはいけません。

なるべく早期に対応するためにも、次のポイントを押さえておきましょう。

専門家に相談し、効率的に進めよう

相続登記をスムーズに行うためには、司法書士や税理士などの専門家に早めに相談しましょう。
相続人があなた一人であれば、手続きはシンプルになりますが、注意しなくてはいけないのは次のようなケースです。

  • 相続人が多数いる場合
  • 不動産が複数ある場合
  • 相続する不動産が遠方にある場合

相続人が2名以上いる場合、この不動産をどのように分割するのか協議しなくてはいけません。
相続の対象となるのが不動産しかない(現金やその他の資産がない)というケースは、協議が難航する傾向にあります。
例えば、兄が不動産を相続し、弟が現金や株資産を相続する、といった分け方ができないからです。

相続する不動産が複数あるのであれば、誰がどの不動産を相続するのかで揉めることがあります。
不動産の資産価値は、立地、建物の築年数、土地の形、などによって固有に評価されるので、AとBの不動産が全く同価値になるということはないからです。

このように、相続が複雑化する可能性があるのであれば、早めに専門家に相談し、対策を考えることが大切です。
最寄りの専門家(税理士、司法書士)に相談し、協議や書類収集にかかる期間も確認しながらスケジュールを立てていく必要があるでしょう。

「相続人申告登記」を活用して過料を避けよう

遺産分割協議がまとまらないのであれば、2024年の法改正で導入された「相続人申告登記」を活用することで、義務違反による過料を回避できます。
この制度は、遺産分割が完了していない段階でも相続人であることを申告できる仕組みです。

「相続人申告登記」手続きの流れ

  1. 相続人であることを証明する戸籍謄本などの必要書類を用意
  2. 相続人申告登記を法務局に提出
  3. 分割協議が終わった時点で本登記に移行する

これにより登記までの時間的猶予が得られるので、登記までに3年以上の時間がかかることが見込まれるのであれば、あらかじめ視野に入れて行動を計画するといいでしょう。

参照:法務省「相続人申告登記について

相続財産の整理を早めに行うことも大切

相続する財産が多いと分かっているのであれば、早い段階から整理を進めておきましょう。
そうすれば登記手続きも効率的に進めることができます。

具体的な準備は次の通りです。

  1. 不動産の一覧表を作成  相続する土地や建物ごとに所在地や面積、評価額を記載します。評価額がわからないという場合は、不動産鑑定士などに事前に依頼しましょう。
  2. 権利関係の確認  名義変更が必要な不動産を特定して、優先順位をつけます。また、相続人が何名いるのかも確認します。
  3. 必要書類の早期準備 戸籍謄本、遺言書などの基本書類を事前に揃えておきます。ただし人はいつ亡くなるのか分かりませんから、必ずしも全てが揃えられる訳ではありません。少なくとも何の書類が必要なのかは把握しておきましょう。

また、事前に準備をしていく中で「生前贈与」をした方が良いのでは?と、気づくこともあります。
生前贈与についてはこちらのコラムで詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

まとめ

相続登記の義務化から1年が経ちましたが、いまだ対応できていない…という人も少なくありません。
何かしらの課題を抱えていて登記が進まないのであれば、専門家への相談をおすすめします。

義務化が開始された令和6年4月1日以前に相続した不動産も、本制度の対象となります。
3年の猶予期間が過ぎてしまうと、過料を課せられることもありますので、思い当たる方は確認しておきましょう。

なお、来年2026年には、「不動産の住所や氏名の変更登記義務化」が予定されています。
年々と変わっていく法律に対応するためにも、専門家集団である税理士法人 荒井会計事務所にご相談ください。

この記事を書いた人

我々は不動産・相続に強い専門家集団です。この「行徳・妙典・浦安」地域で税理士開業して25年になります。
毎年この地域の方より700件以上の確定申告の依頼を受けており、不動産の確定申告や節税に関する対応を得意としています。
節税を考えている方、不動産の法人化を検討している方、不動産の売却を考えている方、相続対策を考えている方、不動産でお悩みの方、ぜひお気軽にご相談ください。
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