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2023年10月24日 不動産コラム 不動産売却境界筆界筆界未定地筆界特定制度

不動産売却時に重要な「筆界の確定」について解説

「筆界」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?
大まかに言うと「境界」と似た言葉になります。
あえて含みを持たせた言い方をしたのには理由があり、
この「筆界」というものと「境界」が一致しないことがあって、
土地の売買時、問題となることがあります。

周辺との境界がはっきりしていない土地のことを
「筆界未定地」と言いますが、この筆界未定地には制限が多く、
活用しにくいので売買が難しいとされます。

しかし、実際には、相続によって受け継いだ土地のように、
古くからそこにあって、登記を確認しても
どこが境界なのか分からないようなケースはよくあります。

今回は、売買において不利とされる
筆界・境界の問題と、その解決法について解説します。
耳なじみのない言葉が出てくるかもしれません。
不動産の売買においては多くの専門的な知識が必要となります。
土地の相続や売買などが発生した場合は、
まずは荒井会計事務所までお気軽にご相談下さい。

筆界と境界の違いとは

「筆界」とは、ある土地が登記された時にその土地の範囲を区画するものとして定められた線をいいます。したがって、所有者同士の合意等によって変更することはできず、分筆や合筆の手続をとらない限り、変動することはありません。
これに対して「境界」という語は、所有権の範囲を画する線という意味で用いられることもあり、その場合には、筆界とは異なる概念となります。土地は、通常、一筆を単位として取引されますが、一筆の土地の一部についても、時効取得することや譲渡をすることが認められていますので、筆界に変動がなくても、所有権の帰属は変更されることがあります。したがって、筆界は所有権の範囲と一致することが多いのですが、一致しないこともあります。

法務局HPより

土地の所有権界としての「境界」と、
公法上の境界といわれる「筆界」、
この2つは本来一致している必要がありますが、
一致していない場合というのが存在するのです。

なぜそのようなことが起きるのでしょうか?

筆界未定地とは

人間にも戸籍があるように、土地についても戸籍のようなものが存在します。
それが「地籍」と呼ばれるもので、
土地の位置や形状を示す情報として登記所に保管されています。

ところが、登記所に残っている地図の半分ほどは、
明治時代の地租改正時に作られた地図をもとにしたもので、
境界や形状が正確ではない場合があります。

そのため、現在においても、市区町村を主体として
境界、位置、面積、所有者などを特定する「地籍調査」が進められていますが、
「筆界未定地」とは、この地籍調査において
隣接地との境界が確認できず、
いまだに境界線が明らかになっていない土地
のことをいいます。

いくつもの土地をまとめて使用していると思われる場合も、
筆界未定地として扱われることがあります。

筆界未定地のデメリット

登記上の境界が定まっていない「筆界未定地」は、
以下のような制限が発生してしまいます。

・登記上の境界が定まっていないために土地を分割することができない(分筆できない)
・土地を合併することができない(合筆できない)
・土地の面積を正しく変更することができない(地籍更生ができない)
・地目変更ができない
・抵当権の設定が難しい
・建築確認申請が難しい

そのため、買い手を探すのが難しく、
値引きせざるをえなくなり、市場価格での売却が難しくなります。
筆界未定地は、売却においては非常に不利なのです。

筆界未定地になってしまう原因

その土地が筆界未定地になってしまうのは、
地籍調査において、土地の境界がはっきりしなかったため、
そのまま処理をされてしまったからです。

境界が確定できなかった理由として、
以下のようなケースが考えられます。

・所有者間で境界トラブルがあり、同意が得られなかった
・境界の位置に、建物などの障害物があり、物理的に確認できない
・調査時点で、所有者の立ち会いがなされなかった
・境界標が破損、撤去されてしまって確認できなくなっている

特に、相続などで引き継いだ土地は、
過去の経緯が分からないまま筆界未定地となっていることも多く、
そのまま売却を進めてしまうと、トラブルの元となる可能性があります。

筆界未定地かどうかを確認するには?

その土地が筆界未定地かどうかは、
「登記事項証明書」で確認することができます。

表題部にある地図番号の横に「国調筆界未定地」と記載があれば
筆界未定地となります。

売却前に筆界を確定させておこう

筆界未定地をそのまま売却するのは、非常に不利です。
そのため、可能であれば、売却前にはきちんと時間を取って、
筆界を確定させておきましょう。

そうすれば、一般の土地として
通常の土地と同様に、市場価格で売りに出すことができます。

筆界を特定させる方法には、以下のようなものがあります。

「筆界特定制度」や「境界確定訴訟」を行う

筆界の曖昧な土地の所有者は、
申請によって「筆界特定制度」を利用することができます。

筆界特定制度とは、筆界特定登記官が
外部の専門家である筆界調査委員の意見を踏まえながら、
土地の筆界の位置を特定する制度です。

実地調査や、測量などの調査を行った上で、
もともとあった筆界を明らかにするもので、
新たに筆界を定めるものではありません。

この制度を利用すれば、裁判などをせずに筆界を明らかにすることができます。
手数料も800円〜最大14400円と、割と安価に利用できます。
参照:政府広報オンライン 土地の境界トラブルを裁判なしで解決を図る「筆界特定制度」

ですが、境界について隣人と揉めていたり、
話し合いが進まないといった場合は、
訴訟によって、裁判所の判断を仰がなくてはいけないこともあります。

これが「境界確定訴訟」です。
これは、裁判所が当事者の主張に拘束されず
「境界を確定する」判決を下します。

詳しいことは、土地の所有権なども絡んでくるので省きますが、
こうした手段もあるということを覚えておいてください。

まとめ

今回は、「筆界」「筆界未定地」についてと、
筆界未定地の調べ方や、解決方法について解説しました。

筆界というのは、あくまでも「登記上の境目」なので、
境界そのものや所有権とは法律上異なっており、
これらの問題が複雑に絡み合っている場合には、
専門家に相談することをおすすめします。

このような土地に関する問題などについても、
当社で相談することが可能ですので、
ぜひ一度、荒井会計事務所までお問い合わせください。

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この記事を書いた人

我々は不動産・相続に強い専門家集団です。この「行徳・妙典・浦安」地域で税理士開業して25年になります。
毎年この地域の方より700件以上の確定申告の依頼を受けており、不動産の確定申告や節税に関する対応を得意としています。
節税を考えている方、不動産の法人化を検討している方、不動産の売却を考えている方、相続対策を考えている方、不動産でお悩みの方、ぜひお気軽にご相談ください。
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