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2024年5月24日 不動産コラム 2024年4月不動産所有者不明土地手続き法務局法改正相続登記の義務化

2024年4月1日からの「相続登記の義務化」で、不動産相続はどう変わる?

不動産を相続する際に必要な手続きとして「相続登記」があります。
これまでは、この相続登記を行わなくても罰則を受けることはありませんでしたが、2024年4月からは法律が変わり、義務化されることになりました。

この法律改正により、何が変わるのでしょうか?
今回は、法改正の背景、具体的な改正ポイント、相続において与える影響について解説します。

そもそも「相続登記」とは

不動産の「相続登記」とは、亡くなった方(被相続人)から不動産を相続した場合に必要となる、「不動産の名義変更」です。

土地や建物の所有者は、法務省の登記簿で管理されており、所有者が変われば登記簿の内容を変更する必要があります。不動産の売買や、不動産の生前贈与でも「所有者の変更」であることは同じですが、特に、亡くなった方から相続を受けた場合に登記を変更することを「相続登記」といいます。

相続登記をするには、亡くなった方(被相続人)の戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書などの必要書類を揃え、不動産の所在地を管轄する法務局で申請します。

2024年4月1日から始まった「相続登記義務化」とは?

法改正の背景

これまで日本では、不動産の相続登記が義務ではありませんでした。
その不動産を受けついだ相続人が登記をしなくても、法的に罰則はなかったのです。
しかし、その結果、相続登記が行われず、登記簿を見ても所有者が分からない「所有者不明」となる不動産が増えてしまいました。

現在、日本全体の20.3%、広さにして約410万haが所有者不明の土地だと言われています。
これは、九州の土地面積(380万ha)を上回る規模です。
※参照:国土交通省「所有者不明土地の実態把握の状況について

所有者不明の土地には多くの問題があります。
例えば、自治体の災害対策や街づくり計画への障害、公共事業や民間事業で土地を活用するにも、土地の所有者が分からなければ、進めることはできません。
また、長年放置されることで、近隣住民にも悪影響を与えます。

こうした問題を解決するために、これまで任意だった相続登記が義務化されたというわけです。

改正の具体的な内容

ということで、2024(令和6)年4月1日からは、相続登記が義務化となりました。
具体的な改正点は、次の通りです。

1.相続登記の義務化

相続で不動産(土地・建物)を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが義務付けられました。ま
た、2024年4月1日より前に相続した不動産で、相続登記がなされていないものについては、2027年3月31日までに相続登記をする必要があります。

遺産分割の場合も同じく、その分割から3年以内に、分割の内容に応じた登記をする必要があります。

2.罰則の導入

正当な理由なく相続登記をしなかった場合は、10万円以下の過料が科せられます。
過料がある場合は、事前に催告書が送付され、書面に記載された期限内に相続登記がされない場合に、所定の手続きのもと、過料の支払いが発生します。

なお、「正当な理由」として認められるものには次のようなものがあります。

・相続人が非常に多く、相続の手続きや状況把握に膨大な時間が必要である
・遺言の有効性や、遺産の範囲が争われている
・相続登記申請の義務がある当人に、重病などの事情がある
・相続登記申請の義務がある当人がDV被害者で、生命・心身の危害が及ぶ恐れがある
・経済的困窮によって登記申請費用が負担できない

相続登記の具体的な手続き

では、不動産を相続したあと、どのような手続きが必要かを解説していきましょう。

1.不動産の所在地を管轄する法務局を確認

相続登記は、その土地がある場所を管轄する法務局にて行います。

法務局のホームページでは、最寄りの支局・出張所も検索することができるようになっています。

2.申請方法を検討する

相続登記の申請は、①窓口で直接申請する、②郵送で申請する、③オンラインで申請する、という3つの方法があります。

ですが、必要書類の一つである「亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍全部事項証明書」は電子化に対応していないため、③オンライン申請では、相続登記を完了することはできません。

3.必要書類の準備、申請書の作成

相続登記に必要な書類・申請書は次の通りです。

【亡くなった方(被相続人)に関連する書類】
・出生から死亡までの「戸籍全部事項証明書」
・住民票の除票

【相続人に関連する書類】
・相続人全員の戸籍謄本
・不動産取得者の住民票

【土地関連書類】
・相続する不動産の固定資産評価証明書

【申請書など】
・登記申請書
・収入印紙
・返信用封筒

【その他】
・遺産分割協議書(遺産分割協議によって相続する場合)
・遺言書(遺言によって相続する場合)
・相続人の印鑑証明書

4.登録免許税の計算と納付

相続登記には「登録免許税」という税金がかかります。
相続する不動産の固定資産評価額に基づいて、その0.4%を納めます。

ただし、相続したのが「評価額100万円以下の土地」の場合、2025(令和7)年3月31日までに登記申請をすれば、登録免許税が免除されます。

まとめ

所有者不明土地があることで、さまざまな弊害が発生していることから、国は「相続登記の義務化」という法改正に踏み出しました。不動産を所有するすべての方、そしてその家族を含めた多くの国民に影響する、かなり大きな法改正です。

これまで任意だったことから、だいぶ前に相続した不動産があるけれど放置している、その土地の相続人が何人になるのか分からないから放置していた、といったケースに対しても、メスが入れられることになります。

特に、相続人が複数にわたる場合は、協議や手続きも複雑になります。
こうしたケースに該当しそうだという方は、専門家集団である荒井会計事務所に、ぜひ一度ご相談ください。
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この記事を書いた人

我々は不動産・相続に強い専門家集団です。この「行徳・妙典・浦安」地域で税理士開業して25年になります。
毎年この地域の方より700件以上の確定申告の依頼を受けており、不動産の確定申告や節税に関する対応を得意としています。
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