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2025年11月28日 不動産コラム 基礎控除年末調整確定申告給与所得控除

年末調整の改正点について 2025年(令和7年)版

前回は年末調整の基本的な部分についてお話ししました。
今年(2025年/令和7年)は、様々な改正点があります。
書類の名称の変更や控除の引き上げなどです。
ニュースで長らく報道されていた「年収の壁」についての議論がここに影響しているわけですね。
今回のコラムでは、その変更点や注意すべき点などを見ていきましょう。

控除額の大幅な変更と「特定親族特別控除」の新設

今回の改正の重要な点は主に以下の3点に集約されます。

◆基礎控除・給与所得控除の見直しと引き上げ
◆扶養親族等の所得要件の緩和
◆特定親族特別控除の創設

これらの変更は、特にパート・アルバイトで働く方や、大学生年代の子を持つ世帯の税負担軽減と、
就労意欲の維持・向上を目的としています。

基礎控除・給与所得控除の改正について

「基礎控除」給与所得控除」の額が2025年からは段階的に見直され、全体として引き上げられます。

「基礎控除」額の変更

改正前は一律48万円でしたが、2025年からは合計所得金額に応じて58万円から最大95万円の範囲で変動します。
特に、合計所得金額が比較的低い層に対して手厚い控除が適用され、低所得層の税負担軽減につながります。
※合計所得金額2,350万円超の場合については、基礎控除額について変更はありません。

「給与所得控除」の見直し

給与所得控除の最低保障額が従来の55万円から65万円へ10万円引き上げられました。
これにより、給与収入が190万円以下の方は、控除額が65万円となり、
課税対象となる所得がその分減少します。
※給与収入190万円超の場合については、給与所得控除額に変更はありません。

扶養親族等の所得要件の緩和

基礎控除と給与所得控除の引き上げに伴い、扶養控除や配偶者控除などの適用を受けるための
「合計所得金額」の要件も変更されました。

・扶養親族、同一生計配偶者、ひとり親の生計を一にする子の所得要件について

48万円 → 58万円 と10万円引き上げられました。

・配偶者特別控除の対象となる配偶者について

 58万円超133万円以下に引き上げられました。
(改正前は48万円超133万円以下)

・勤労学生の所得要件について

 75万円 → 85万円 と10万円引き上げられました。

特定親族特別控除の創設

新たに「特定親族特別控除」が創設され、19歳から22歳(主に大学生世代の子ですね)の子を持つ親が受けられる控除について、
子の所得要件が大幅に改善されました。

これにより、扶養している特定親族(大学生など)のアルバイト収入が123万円を超え、
従来の扶養控除(特定扶養親族控除:63万円)から外れてしまった場合でも、
その特定親族の合計所得金額に応じて、控除額が段階的に適用されることになります。

(具体例として)

特定親族の合計所得金額(大学生のアルバイトでの所得などのイメージです)が58万円超133万円以下(給与収入で123万円超188万円以下)の場合に、63万円から3万円まで段階的に控除が適用されます。

今回のこの制度の創設により、例えば大学生年代の子がアルバイト収入を増やしたとしても、
親の税負担が急激に増加することを防ぎ、「188万円の壁」まで一定の控除を受けられることとなります。

年末調整書類の変更点

上記のような控除制度の大きな改正に伴い、年末調整で提出する書類の様式と名称も変更されています。

統合される申告書:「基・配・特・所」申告書

これまで「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」(通称:基・配・所 申告書)として
1枚で提出されていた様式に、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」が統合されます。

新名称: 「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」
※書類の右上に「基・配・特・所」と記載されています。

この新様式により、1枚の用紙で4つの控除に関する申告を行うことになります。
特に前述した「特定親族特別控除」が新設されたことにより、対象となる場合はその分記載項目が増えるため、
計算や記入のミスや漏れが発生しないよう注意が必要です。

扶養控除等申告書(令和8年分以後)

2025年分(令和7年分)の年末調整書類ではありませんが、
2026年(令和8年)以降の給与計算(源泉徴収)に影響する重要な変更として、
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記載事項も改正されます。

従来の「控除対象扶養親族」に加え、特定親族を含んだ「源泉控除対象親族」を記載する欄が設けられます。

これにより、毎月の給与計算を行う際から特定親族特別控除が源泉徴収に反映されることになり、
従業員の月々の手取り額の変動を抑えることが可能になります。

まとめ

今回の様々な改正によって、年末調整の手続き上は注意すべき点が増えます。
しかしこれらの改正は税額の控除引き上げにつながるプラスのものですので、
前向きに受け止め粛々と手続きを進めていきましょう。

会社からの給与等については年末調整で手続きできますが、
それとは別に不動産所得などがある方は別途確定申告も必要になります。

それぞれの手続きを適切に行い、正しい納税そして控除の恩恵を受けられるようにしたいですね。

不動産所得がある方で税金の申告にお困りの際はぜひ一度税理士法人荒井会計事務所までご相談ください。

この記事を書いた人

我々は不動産・相続に強い専門家集団です。この「行徳・妙典・浦安」地域で税理士開業して25年になります。
毎年この地域の方より700件以上の確定申告の依頼を受けており、不動産の確定申告や節税に関する対応を得意としています。
節税を考えている方、不動産の法人化を検討している方、不動産の売却を考えている方、相続対策を考えている方、不動産でお悩みの方、ぜひお気軽にご相談ください。
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