不動産を売却するときに関わる専門家と相談のポイント
不動産を売却する際には、その段階に応じて専門家のサポートを受けることになります。
売却の流れは一見シンプルに見えますが、税金や契約、登記手続きなど、専門知識が必要な場面が多々発生しますし、時には資格を持っている人にしかできない手続きもあります。
そこで今回は、不動産を売却する際に関わる専門家と、彼らから的確なアドバイスを得るために気をつけるべきポイントについて解説していきます。
不動産売却に関わる専門家
不動産仲介業者(宅地建物取引士)
不動産を売却する際、まずはじめに実務的に関わりが生じるのが、不動産仲介業者です。
仲介業者の主な仕事は、その不動産の適切な売却価格を見積もり、提案すること。
そして、買い手を探すための広告周知、購入希望者との条件交渉、そして売買契約の取りまとめです。
マンションや土地、またはエリアなど、不動産会社によって得意な分野が異なるため、自分が売りたい不動産を適切に扱ってくれる仲介会社を探すことが、いい売却のポイントです。
仲介会社を選ぶ際には、複数社から見積もりをとって、適切な対応をしてくれそうかどうか、担当者との相性などもチェックしておきましょう。
税理士
不動産を売却して収入を得た年は、「不動産収入」としてその金額を確定申告する必要があります。
確定申告のやり方、または不動産収入に関わる税務情報を相談できるのが税理士です。
売却して得た利益には「譲渡所得税」という税金が発生しますが、居住用財産(住宅)の場合は3000万円まで特別控除が利用できます。
また、買い換えの場合にも特例があり、こうした各種控除が適用できるかどうかの判断や、適用した場合の税金の計算などを依頼することができます。
相続した不動産であれば、また別の税法が適用されることもあるので、これも相談した方がいいでしょう。
税制度は非常に複雑で、毎年のように細かな改正が行われます。
正しい税金計算を行うためにも、不動産売却を考えた時点で、早めに税理士に相談し、必要書類の準備や節税対策を進めることが大切です。
※参照:法務省「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
不動産鑑定士
不動産の適正価格を算出する専門家です。
売却価格が正当なものかどうかを判断するために依頼することがありますが、不動産仲介会社がその役割を担うこともあります。
一般的な居住用物件であれば、鑑定士に依頼する必要性は必ずしもありませんが、立地や建物の作り、権利関係など特殊な事情を抱えている場合には、鑑定士に依頼して不動産の評価をしてもらった方が安心です。
特に、相続などで引き継いだ不動産を売却する際、複数人が共同で権利を持っているというケースだと、資産の計算がややこしくなりがちなので、不動産鑑定士によって適切な価格を算出してもらった上で、今後の方針を決めるとトラブル回避に繋がります。
司法書士
不動産売却に伴う、登記手続きや事務手続きを担当してくれます。
不動産売買契約を結ぶと、登記の名義を売主から買主に変更することになりますが、この申請手続きを司法書士に依頼することになります。
住宅ローンを組んでいて、その不動産に抵当権がある場合は、その抹消と変更もしなくてはいけないのですが、その手続きも司法書士が行ってくれます。
一般的には、司法書士を用意するのは買主側になりますが、事務処理を依頼する費用は売主も負担します。
そのため、あまりにも高い価格を提案されたり、信用できないと感じる担当者であれば、別の司法書士に変更することも検討しましょう。
弁護士
売却時に発生するトラブルやリスクの解決をサポートしてくれます。
不動産売却においては、やはり相続が絡むケースで依頼することが多いでしょう。
夫婦名義で購入した不動産の売却や、複数人の親族で共同所有している物件などはトラブルになりやすいので、事前に弁護士に相談しておくと安心です。
もちろん契約書のリーガルチェックなども行ってくれますので、複雑な権利関係や紛争が絡む場合も心強い味方になります。
土地家屋調査士
不動産の測量や境界確認を行う専門家です。
周辺の土地との境界が不明瞭な不動産や、土地を分割して売却するとなった場合に依頼することになります。
古くから代々受け継がれている土地であれば、隣地との境界がはっきりしないことも多いので、相続などで古い土地を引き継いだ場合には、まずは境界を確定させるために依頼しておくこともいいと思います。
売却を考えてから依頼すると、直前で予期せぬ問題が発生することもあります。
専門家へ相談する際のポイント
早めの相談が成功のカギ
不動産売却には多くの手続きが伴い、それぞれに準備が必要になります。
例えば、節税対策を検討するのであれば、売却計画の初期段階で税理士に相談しておくことで、特例や控除を最大限に活用した売却計画・価格設定などを考えることができます。
また、測量や境界確定が必要な不動産であれば、土地家屋調査士に早めに依頼することで、売却をスムーズに進めることができるようになります。
費用の確認と、相見積もり
各専門家のサービスにはそれぞれ報酬が発生しますが、一応の相場はありながら、その特殊性から会社によって価格が大きく違うケースも少なくありません。そのため、初めから一つの会社に絞るのではなく、複数の会社に話を聞いて見積もりを出してもらうようにしましょう。
また、不動産売却時には多くの専門家の手を借りることになるので、仲介手数料、税理士報酬、司法書士や鑑定士の手数料など、合計金額を把握しておくことも重要です。現在は不動産価格が高騰しているので利益が確保できるでしょうが、不人気な不動産などでは売却益が出ない、むしろ手数料を差し引くとマイナスになるというケースもなくはありません。損をしないためにも、合計金額も把握しておきましょう。
信頼できる専門家を選ぶ
専門家を選ぶ際には、経験や実績を必ず確認することが大切です。
専門家にはそれぞれ、得意・不得意な領域があるので、売却予定の不動産に似た実績を多く持っている専門家を選びましょう。
また、いくら実績があっても、担当者の人間性が信用できない、担当者と相性が合わない場合といった場合も、トラブルの元となりますので、違和感を持ったら別の専門家を探しましょう。
不動産売却を成功させるために、専門家とうまく連携しよう
不動産を売却する機会というのは、人生でそう多くはありません。
一般的な人であれば、一生のうちに1〜2回あるかないかといった程度で、一般人と専門家との情報格差が非常に大きいのが特徴です。そのため、個人で全てを完結できる人はほとんど存在しませんし、どこかのタイミングでは専門家に依頼することになります。
相談のタイミングを逃さず、信頼できる専門家と連携することができれば、理想に近い形で不動産売却を進めることができるでしょう。
不動産売却後の確定申告や節税対策にお困りの方は、専門家集団である税理士法人荒井会計事務所にぜひご相談ください。